#植物工場説明資料

【第28回】グリーンシェルターを導入する前に考えること

育てる作物、販売先、運転体制から計画する

こんにちは。UnderSOIL(アンダーソイル)の野口です。

 前回は、センサーや自動制御を使いながら、植物の状態に合わせて栽培環境を調整する考え方をご紹介しました。

 植物工場というと、温度や湿度、水、照明などを自動で管理できる設備に目が向きます。しかし、実際に導入を検討するとき、最初に決めるべきことは設備の仕様ではありません。

 何を育て、誰に、どのような状態で販売するのか。

 ここが曖昧なままでは、どれほど高機能な設備を導入しても、事業として安定させることは難しくなります。

 今回で、植物工場についての連載内容をまとめたいと思います。最後に、グリーンシェルターやグリーンシェルターMAXを導入する前に考えておきたいことを、作物、販路、設備、運転体制の順に整理します。

何を育てられるかより、何を育てるか

 グリーンシェルターの垂直栽培壁は、葉物野菜、ハーブ、小型の果菜類など、比較的コンパクトに育ち、垂直面を生かしやすい作物に向いています。

 レタス類、ベビーリーフ、バジル、ミントなどは、垂直栽培壁との相性を検討しやすい作物です。イチゴや小型の果菜類、食用花なども候補になりますが、品種、草丈、根の張り方、受粉方法、収穫作業のしやすさまで確認する必要があります。

 植物工場で育てられるかどうかと、安定して販売できるかどうかは、同じではありません。

 たとえば、栽培自体は可能でも、収穫作業に時間がかかる作物や、販売単価に対して栽培期間が長い作物では、施設全体の回転率が下がります。逆に、短期間で収穫できても、販売先が確保できなければ、収穫した作物を持て余してしまいます。

 根菜についても、すべてが垂直栽培壁に向くわけではありません。根の形や長さ、培地の深さ、収穫方法によっては、別の栽培設備を検討した方がよい場合があります。

水平ラックは、主設備とは役割が違う

 グリーンシェルターMAXの主設備は、両面型の垂直栽培壁です。1基の栽培壁には720の栽培ポートがあり、限られた床面積の中で多くの植物を配置できます。

 一方、最大7段まで構成できる水平ラックは、育苗、マイクログリーン、発芽、増殖などに向く補助設備です。

 垂直栽培壁と水平ラックは、どちらが優れているかを比べるものではありません。育てる作物や生育段階によって役割を分ける設備です。

 種まきや育苗を水平ラックで行い、一定の大きさに育った苗を垂直栽培壁へ移す方法も考えられます。ただし、どこで植え替えるのか、苗をどのように運ぶのか、使用後のトレーや栽培壁をどこで洗浄するのかまで計画しておかなければ、作業が滞ります。

720ポートは、720個の収穫を保証する数字ではない

 栽培ポート数は、生産計画を考えるための重要な数字です。ただし、720ポートの栽培壁を使えば、毎回必ず720個の商品を出荷できるという意味ではありません。

 発芽率、苗の選別、生育のばらつき、病気や傷み、収穫サイズ、栽培期間、洗浄や植え替えに必要な時間を考慮する必要があります。

 同じレタスでも、小さいサイズで早く収穫するのか、大きく育てて一株単位で販売するのかによって、年間の栽培回数は変わります。ハーブのように必要な部分を収穫しながら栽培を続ける作物では、株ごとの管理方法も異なります。

 施設の規模を決めるときは、ポート数だけを見るのではなく、一つのポートから年間に何回、どの程度の商品を出荷できるのかを計算することが大切です。

販売先から逆算する

 植物工場の計画では、「育てたい作物」より先に、「販売できる作物」を考えた方が現実的です。

 レストランへ納品する場合は、香りや鮮度、品種の珍しさ、必要な量を安定して供給できることが重視されます。直売所や小売店では、見た目、日持ち、包装、価格帯も重要です。

 宿泊施設やオーベルジュに併設する場合は、施設内で使用する量だけでなく、料理、収穫体験、見学、物販などを組み合わせることも考えられます。

 ただし、「施設で育てた野菜」という話題性だけで、事業が継続できるわけではありません。毎週必要な量、出荷日、販売価格、規格外品の使い道まで決めておく必要があります。

最大4区画をどう使うか

 グリーンシェルターでは、設備構成に応じて、最大4つの栽培区画を管理する考え方があります。

 作物や生育段階に合わせて、照明時間、灌水、pH、EC、温度、湿度、CO₂などの条件を変えられることは、多品種を育てるうえで大きな利点です。

 しかし、区画を増やせば管理が簡単になるわけではありません。区画ごとに異なる条件を設定すると、栽培記録、収穫時期、清掃、資材管理も複雑になります。

 多くの作物を少量ずつ育てるのか、品種を絞って生産効率を高めるのかによって、区画の使い方は変わります。導入時から最大数の区画を使うのではなく、運転に慣れながら段階的に作物を増やす方法も考えられます。

自動化しても、人の仕事はなくならない

 植物工場では、照明、灌水、空調、除湿、CO₂供給などを自動制御できます。異常を検知し、担当者へ通知する仕組みも組み合わせられます。

 それでも、植物を見る作業は必要です。

 葉の色や形、根の状態、病気や害虫の兆候、設備の汚れ、ノズルの詰まり、ポンプや照明の異常など、数値だけでは判断しにくい変化があります。

 栽培壁や配管の清掃、フィルター交換、センサーの点検、養液タンクの管理、収穫後の衛生管理も、継続的に行わなければなりません。

 自動化は人を不要にするためのものではなく、人が判断しやすい状態をつくり、日々の作業を安定させるための仕組みです。

設備費だけでなく、運転費まで考える

 植物工場では、照明、空調、除湿、ポンプ、制御機器などを継続して動かします。そのため、導入費だけでなく、電力、水、養分、種苗、培地、消耗品、人件費、設備保守を含めて考える必要があります。

 外気温、湿度、建物の断熱性能、作物の種類、照明時間、栽培密度によって、必要なエネルギーは変わります。

 水を循環利用できる仕組みであっても、蒸発や植物の吸収、設備洗浄による補給は必要です。衛生状態を維持するためには、配管やタンクを定期的に確認し、必要に応じて洗浄や水の入れ替えを行います。

 設備の効率だけを見るのではなく、地域の電力料金、水質、夏と冬の気候、保守を担当できる人材まで含めて検討することが重要です。

植物工場は、作物を決めてからつくる

 グリーンシェルターやグリーンシェルターMAXは、建物、栽培壁、照明、灌水、空調、除湿、CO₂、制御システムを組み合わせた植物工場です。

 ただし、設備を先に決め、完成してから作物や販売先を探す進め方はおすすめできません。

 販売先が必要とする作物、数量、品質、収穫時期を整理し、それを実現するために必要な栽培壁の数、区画、補助設備、運転体制を決める。この順番で計画することで、設備と事業のずれを減らせます。

 植物工場は、作物を育てる設備であると同時に、毎日運転を続ける生産施設です。自動化できる部分と、人が担う部分の両方を理解したうえで計画する必要があります。

 UnderSOILでは、植物工場だけを単独で考えるのではなく、農園、飲食店、宿泊施設、直売所など、土地全体の使い方や事業との組み合わせを見ながら検討していきます。

 次回からは、食材やワインを地中で保管する設備、Groundfridgeについてご紹介します。

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