#植物工場説明資料

【第24回】植物工場では、水と養分をどう管理するのか

根元へ必要な量を届ける、垂直点滴栽培の考え方

こんにちは。UnderSOIL(アンダーソイル)の野口です。

 前回は、グリーンシェルターMAXの18,000ポートを、実際の生産計画へどうつなげるかをご紹介しました。

 栽培ポートへ植物を配置したあと、安定した生育を支えるのが、水と養分の管理です。

 植物工場では、決められた量の水や肥料を毎日送れば、それだけで植物が同じように育つわけではありません。植物が水を吸う量は、作物の種類、生育段階、光、温度、湿度によって変化します。

 また、根が必要としているのは水と養分だけではありません。根が呼吸するための酸素と、根を支える培地の状態も重要です。

 今回は、グリーンシェルターとグリーンシェルターMAXで採用する垂直点滴栽培を中心に、pH、EC、水温、酸素、培地の乾湿をどのように管理するのかをご紹介します。

外側の形は違っても、根の管理は共通する

 UnderSOILでは、外部に土と芝を取り入れ、農園や里山の景観になじませるタイプをグリーンシェルター、土を載せず、外殻と内部の生産環境を優先するタイプをグリーンシェルターMAXとして区分しています。

 外部の構成は異なりますが、植物の根元へ水と養分を届け、根が働きやすい環境をつくる基本的な考え方は共通しています。

 壁面栽培では、壁の内部に生物活性を持つ培地を保持し、植物を一株ずつ栽培ポートへ配置します。各ポートには点滴配管から水と養分を直接届け、根の周囲に水分、養分、空気が共存できる環境をつくります。

 水を大量に流して壁全体を濡らすのではなく、必要な場所へ必要な量を届けることが、この栽培方式の基本です。

最初に確認するのは、肥料よりも原水

 養分の配合を決める前に、まず確認するのが使用する水です。

 水道水、井戸水、雨水では、もともと含まれているカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、塩化物、重炭酸などが異なります。原水に含まれる成分は、養分を加えたあとのpHやECにも影響します。

 そのため、植物工場を計画する際には、原水のpHやECだけでなく、アルカリ度や含有成分も分析します。水質の状態を把握せずに養分だけを調整すると、栽培開始後にpHが安定しない、特定の成分が過剰になるといった問題が起こる可能性があります。

 どの水を使うのかを確認し、その水に合わせて養分の種類、調整設備、タンク容量を決めることが、水管理の出発点です。

根元へ必要な量を直接届ける

 グリーンシェルターの垂直点滴栽培では、原水へ必要な養分を加え、pHやECを確認したうえで、ポンプと点滴配管を通して各ポートへ供給します。

 計画に応じて、根へ届ける水に酸素を取り込む酸素化設備も組み合わせます。酸素化設備はすべての計画に同じ構成で入れるのではなく、育てる作物、使用する培地、設備規模、水質に合わせて採用を判断します。

 点滴量が少なすぎれば、壁面の一部まで水が届かないことがあります。反対に多すぎれば、培地が長時間湿った状態になり、根の周囲へ空気が入りにくくなります。

 大切なのは、水を多く与えることではなく、各ポートへ均一に届け、培地の水分を適切な範囲に保つことです。

pHは、養分を利用しやすい状態を整える

 pHは、水や養液が酸性側にあるか、アルカリ性側にあるかを表す指標です。

 養液の中に必要な成分が含まれていても、pHが作物や培地に合っていなければ、根が一部の養分を利用しにくくなることがあります。

 ただし、グリーンシェルターの管理値を一つの数字に固定することはできません。育てる作物、品種、生育段階、培地、原水のアルカリ度によって、適切な管理範囲が変わるからです。

 グリーンシェルターでは、供給する水のpHだけで判断せず、培地の状態や葉の色、根の張り、生育の変化も合わせて確認しながら管理範囲を調整します。

ECは、養分全体の濃さを見る

 ECは、水に溶けている成分がどの程度電気を通すかを測る指標です。養分や塩類が増えると、一般にECも高くなります。

 ECが低すぎれば、植物に必要な養分が不足している可能性があります。反対に高すぎれば、根が水を吸いにくくなり、植物へ負担がかかることがあります。

 ただし、ECで分かるのは養液全体の濃さです。

 ECが適切な範囲に入っていても、窒素、カリウム、カルシウムなど、個々の養分が適切な比率になっているとは限りません。植物はすべての養分を同じ割合で吸収するわけではないため、日常的なEC確認に加え、必要に応じて原水や養液の成分分析を行います。

根には、水分と酸素の両方が必要

 植物の葉は光合成を行いますが、根は酸素を使って呼吸しています。

 培地が水で満たされた状態が長く続くと、根の周囲へ空気が入りにくくなります。反対に培地が乾きすぎれば、根は水と養分を吸収しにくくなります。

 そこで、点滴と点滴の間に適度な乾湿の変化をつくり、培地の中へ水分と空気の両方を残します。

 生物活性を持つ培地では、植物の根だけでなく、培地内の微生物も活動しています。水分、酸素、温度、養分のいずれかが大きく偏ると、根圏全体のバランスにも影響します。グリーンシェルターの壁面栽培は、培地の中に生きた根圏環境を維持しながら、各ポートへ点滴灌水する考え方です。

一日の給水量だけでは、灌水は決められない

 同じ一日の給水量でも、一度にまとめて与える場合と、少量ずつ複数回に分ける場合では、培地の状態が変わります。

 一回の量が多すぎると、壁面の下側へ水が集まりやすくなります。一方、一回の量が少なすぎると、栽培壁の上部や配管の末端まで均等に届かないことがあります。

 照明が点灯して植物が活発に水を使う時間帯と、消灯後では、必要な灌水量も異なります。温度や湿度が変われば、葉から失われる水分量も変化します。

 そのため、一回の水量、灌水回数、灌水間隔は、作物、生育段階、室内環境、培地の乾き方を見ながら調整します。

 単にタイマーを設定するのではなく、点滴後に培地がどの程度湿り、次の点滴までにどの程度乾くのかを確認することが重要です。

センサーの数値と、植物の状態を両方見る

 pH、EC、水温、タンク水量、ポンプの運転状態などは、センサーや管理画面で確認できます。

 ただし、数値が正常であっても、すべてのポートへ水が届いているとは限りません。

 点滴口の一部が詰まっている、配管の末端だけ流量が不足している、栽培壁の上部と下部で水分量に差があるといった問題は、植物を実際に見なければ分からないことがあります。

 また、pH・ECセンサーは、汚れや校正不足によって測定値がずれることがあります。自動投入設備は、センサーの数値をもとに養分や調整液を加えるため、測定値がずれると、かえって養液の状態を崩す可能性があります。センサーの清掃と校正は、自動制御を正しく使うための基本的な管理です。

 葉の色、張り、成長速度、根の色、培地のにおい、点滴の流れなどを確認し、設備の数字と実際の植物の状態を照らし合わせます。

養分の原液は、分けて保管する

 養分は、必要な成分を高濃度の原液として保管し、灌水時に原水へ加えて使用します。

 ただし、すべての成分を一つの原液タンクに入れると、高濃度の状態で成分同士が反応し、沈殿することがあります。

 特にカルシウムは、リン酸や硫酸を含む成分と高濃度で混ざると沈殿しやすく、配管や点滴口の詰まりにつながります。そのため、カルシウムを含む原液と、リン酸・硫酸系を含む原液をA液とB液などに分けて保管し、十分に希釈される段階で混合します。

 資料①に示したA液、B液、微量要素、酸素化設備などは構成例です。実際のタンク数や設備構成は、育てる作物、使用する肥料、施設規模によって変わります。

余剰水を増やさないように調整する

 グリーンシェルターの垂直点滴栽培では、各ポートの根元へ必要な量を直接届け、余分な水が増えないように灌水量を調整します。

 それでも、設備の立ち上げ時や設定変更時には、栽培壁の下部へ余剰水が出ることがあります。

 余剰水を回収する場合は、そのまま原水タンクへ戻すのではなく、水質、塩類、微生物、衛生管理を確認したうえで、再利用、処理、排水の方法を決めます。

 水を再利用できることだけを優先すると、設備内に不要な成分や微生物が蓄積する可能性があります。グリーンシェルターでは、節水と根圏環境の安定を両立させるため、まず過剰な灌水を減らし、必要に応じて余剰水の処理方法を計画します。

数字を先に決めるのではなく、作物から決める

 植物工場では、pHやECの目標値だけを先に決めても、安定した栽培計画にはなりません。

 育てる作物、品種、生育段階、収穫時の大きさ、培地、原水、照明、温度、湿度を決めたうえで、管理範囲を設定します。

 UnderSOILでは、設備へ作物を合わせるのではなく、何を、どの品質で、どれだけ生産するのかを確認し、その作物に必要な水質、養分、タンク、ポンプ、配管、点滴、センサーを組み立てます。

 植物工場の水管理は、肥料を水へ混ぜるだけの作業ではありません。

 水、養分、酸素、培地、設備、植物の状態を継続して確認し、根が働きやすい環境を維持することです。

 次回は、植物工場の照明についてご紹介します。

 植物に必要な光は、単に明るければよいわけではありません。光の量、波長、照射時間、栽培壁への届き方、曲面内壁による反射をどのように組み合わせるのかを考えていきます。

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