【第19回】景観に溶け込む建築はなぜ強いのか
こんにちは。UnderSOIL(アンダーソイル)の野口です。
今回は、目立ちすぎないのに、記憶に残る建物 という事でお話したいと思います。
建物は、目立てばいいというものではありません。
もちろん、街中の店舗や商業施設では、外から見つけてもらうための分かりやすさが大切な場合もあります。
ただ、山、森、里山、農園、湖畔、海辺の斜面、旅館やホテルの庭園などでは、建物が強く主張しすぎると、その土地の良さを壊してしまうことがあります。
UnderSOILが提案する、アースシェルを用いた土中建築やFRP草屋根は、建物を景観の一部として考えやすい建築です。
建物を隠すのではなく、土地になじませる。
でも、ただ埋もれさせるのではなく、そこにしかない印象をつくる。
このバランスが、景観に溶け込む建築の強さだと思っています。

景観を壊さないことが、施設の価値になる
自然環境を活かした宿泊施設や観光農園、里山施設では、土地そのものが大きな魅力になります。
遠くに見える山並み、畑の広がり、季節ごとに変わる草木、斜面の起伏、朝夕の光。
こうしたものが、その場所に行く理由になります。
そこに建物をつくるとき、建物だけが強く浮いてしまうと、せっかくの景観が弱くなってしまいます。
逆に、建物が景観にうまくなじむと、土地の魅力を引き立てながら、施設全体の印象を整えることができます。
土屋根建築やFRP草屋根は、屋根や外側に土と植物をまとわせることで、建物の輪郭をやわらげることができます。
外壁と屋根の境目が強く出すぎず、周囲の緑や地形とつながって見えるため、自然の中に置いたときに相性がよい建築です。

目立たないことと、印象に残らないことは違う
景観になじむ建築というと、「目立たない建物」と思われることがあります。
でも、目立たないことと、印象に残らないことは別です。
派手な色や大きな看板で目立たせなくても、建物の形、配置、素材、窓の向き、アプローチのつくり方で、印象に残る場所はつくれます。
土中建築の場合、土と植物に包まれた外観そのものに特徴があります。
周囲になじんでいるのに、一般的な箱型の建物とは違う。
この「自然に見えるけれど、普通ではない」という感覚が、宿泊施設や観光農園では強みになります。
あまりに建物が主張しすぎると、最初は驚かれても、だんだん景観の中で疲れて見えることがあります。
長く使う施設では、派手さよりも、見飽きにくさが大切です。

建物を「風景の邪魔者」にしない
自然の中に建物をつくるとき、建物はどうしても人工物になります。
だからこそ、配置や高さ、外観の見え方が大切です。
眺望を遮らないか、遠くから見たときに浮いて見えないか、夜の照明が強すぎないか、駐車場やアプローチと一緒に見たときに違和感がないか。
こうしたことを計画段階で見ておく必要があります。
土中建築では、建物の一部を地形に近づけたり、屋根を土や植物で覆ったりすることで、建物の存在感を調整しやすくなります。
ただし、形だけを景観に寄せればよいわけではありません。排水、メンテナンス、植栽管理、利用者の動線まで含めて考えないと、見た目だけの計画になってしまいます。
景観になじむ建築は、感覚だけでつくるものではありません。
実際には、かなり地味な確認の積み重ねで成り立っています。

宿泊施設や観光農園では、景観が記憶になる
宿泊施設や観光農園では、利用者が覚えているのは建物だけではありません。
客室まで歩いた道、畑の向こうに見えた建物、カフェの窓から見えた景色、夕方に外から眺めた外観。
そうした場面が、施設の印象として残ります。
景観に溶け込む建築は、建物だけを主役にしません。
土地、植物、季節、光、利用者の動きと一緒に、施設全体の体験をつくります。
これは、宿泊施設の離れや客室棟だけでなく、観光農園の受付、休憩棟、カフェ、直売所、里山施設の滞在空間にも当てはまります。
建物が景観の中で自然に見えると、利用者はその場所全体を心地よく感じやすくなります。
写真を撮ったときにも、建物だけでなく、周囲の風景まで一緒に残ります。

土地の魅力を引き立てる建築へ
UnderSOILの土中建築は、建物だけを目立たせるためのものではありません。
その土地にある景色や地形、植物、空気感を活かしながら、建物をどう置くか。
そこに来た人が、どんな順番で建物を見て、どこで立ち止まり、どんな景色を覚えて帰るのか。
景観に溶け込む建築では、そうした流れまで含めて考えることが大切です。
FRP草屋根やアースシェルを用いた土中建築は、土と植物をまとうことで、建物を景観の中に置きやすくします。
ただし、本当に大切なのは、建物の形だけではなく、その土地に合った計画にすることです。
目立ちすぎないのに、記憶に残る。
景色になじむのに、普通ではない。
宿泊施設、観光農園、里山施設、景観型カフェなどにとって、こうした建築は施設の価値を高める選択肢になります。
UnderSOILでは、建物を風景から切り離して考えるのではなく、土地の魅力を引き立てる土中建築として提案していきます。