【第12回】UnderSOILの土中建築とは
こんにちは。UnderSOIL(アンダーソイル)の野口です。
今回は土に包まれる宿泊施設・住宅・農業施設を現実にする仕組みに関するお話をしたいと思います。
「景観になじむ宿泊棟をつくりたい」
「自然の中に、少し変わった戸建て住宅や別荘を建てたい」
「観光農園や里山に、普通のプレハブではない休憩所をつくりたい」
そんな相談を受けることがあります。
山、森、畑、湖畔、里山、農園。
せっかく良い景色があるのに、そこへ普通の四角い建物を置くと、どうしても景観から浮いてしまうことがあります。
もちろん、普通の建物が悪いわけではありません。
ただ、土地の雰囲気を活かしたい場所では、建物の形や見え方が事業の印象を大きく変えます。
UnderSOIL(アンダーソイル)が提案しているのは、そうした場所に向けたアースシェルを用いた土中建築です。
土と植物に包まれ、建物の輪郭がやわらかくなり、景観の中に溶け込んでいく。
でも、地下室のように暗く閉じた空間ではなく、人が明るく快適に使える建築として計画する。
それが、UnderSOILの考える土中建築です。
日本では、まだ「土中建築」という言葉はあまり一般的ではありません。
地中建築、土屋根建築、草屋根住宅、地下建築、屋上緑化など、近い言葉はいろいろあります。
ただ、UnderSOILが扱う土中建築は、単に地面の下に部屋をつくるものではありません。
また、普通の建物の屋根に緑をのせるだけの屋上緑化とも違います。
アーチ状のFRPフレームでアースシェルをつくり、その外側に防水、排水、断熱、土、植物を組み合わせていく。
壁と屋根を分けすぎず、建物全体を土と植物で包むように考える。
この仕組みによって、FRP草屋根や土屋根建築のような見た目だけでなく、土中建築としての使い方まで計画しやすくなります。

ただし、ここで誤解してほしくないことがあります。
UnderSOILの土中建築は、完成した小屋をそのまま置くだけの商品ではありません。
アースシェルは、土に包まれる建築をつくるための大切な仕組みですが、建物として完成させるには、敷地条件、基礎、主要構造、設備、内装、外構、植栽、確認申請まで含めて考える必要があります。
つまり、アースシェルというキット部分と、現場ごとにつくる建築部分を組み合わせる方式です。
ここをきちんと理解しておくと、計画の進め方がかなり見えやすくなります。
たとえば、同じアースシェルを使う場合でも、宿泊施設の客室棟として使うのか、戸建て住宅として使うのか、観光農園の休憩棟として使うのかで、必要な計画は変わります。
宿泊棟なら、水まわり、空調、避難、清掃動線、荷物置き場まで考えたい。
戸建て住宅なら、日常生活の使いやすさ、断熱、換気、収納、メンテナンスが大切になります。
観光農園なら、受付、カフェ、直売所、休憩スペース、体験施設としての使い勝手が重要です。
建物の形だけを選ぶのではなく、そこで何をするのかまで考えていく必要があります。
そして、土中建築で特に大事なのが土地です。
地盤はどうか。
雨水はどこへ流れるか。
地下水位は高くないか。
重機や資材は搬入できるか。
積雪はあるか。
景色をどちらに向けて開くか。
こうした条件によって、同じ土中建築でも計画の答えは変わります。
見た目はやわらかく、自然になじむ建物ですが、実際にはかなり現実的な確認が必要です。
ここを飛ばしてしまうと、あとから防水、排水、申請、施工で困ることになります。
土に包まれる建築は、雰囲気だけでは建ちません。

UnderSOILの土中建築では、まず敷地と用途を確認します。
そのうえで、主要構造や基礎、給排水・電気・空調といった設備、窓やドア、内装、外構を計画し、そこにアースシェルを組み合わせていきます。
アースシェルの外側には、断熱、防水、排水、土、植栽が重なります。
土をかぶせる建築だからこそ、防水の納まり、排水計画、土の入れ方、植栽の維持管理まで含めて考えることが大切です。
普通の箱型建築に、あとから草屋根らしさを足すのではありません。
最初から、土と植物に包まれる形を前提に計画する。
そのために、アースシェルがあります。
アースシェルの曲面は、見た目をかわいくするためだけのものではありません。
壁と屋根を分けすぎない形にすることで、土を受け、水を逃がし、断熱や防水を重ねやすい外側の構成をつくります。
もちろん、FRPだから何もしなくても大丈夫、という話ではありません。
接合部、端部、開口部、防水層、排水経路、土の厚み、植栽管理。
こうした細部を丁寧に詰めることで、土中建築として安心して使える建物に近づいていきます。

建築確認申請についても、最初から考えておく必要があります。
現時点では、UnderSOILの土中建築は、アースシェルそのものを確認申請上の主要構造体として扱うのではなく、主要構造を日本側で成立させ、その外側にアースシェルを組み合わせる考え方を基本にしています。
つまり、アースシェルは、土中建築らしい曲面形状、防水、断熱、土被覆、植栽を成立させるための外側の仕組みです。
ここは少し専門的ですが、とても大事です。
「海外では建っています」
「見た目が面白いです」
それだけでは、日本で建築として進めることはできません。
用途、規模、地域、構造、防火、避難、設備、敷地条件。
建築確認では、こうしたことを一つずつ整理する必要があります。
だからこそ、UnderSOILの土中建築は、早い段階で設計者や施工者と一緒に、敷地条件と用途を確認しながら進めることが大切です。
「置くだけで簡単に完成します」とは言いません。
でも、だからこそ、きちんと計画したときに、その土地にしかない建物になります。
では、どんな用途に向いているのか。
UnderSOILの土中建築が特に相性がよいのは、自然や景観を活かした場所です。
旅館やホテルの離れ、自然の中の宿泊棟、戸建て住宅、別荘、セカンドハウス、観光農園、農業体験施設、景観型カフェ、直売所、企業保養所、研修施設、公園や里山の休憩拠点。
こうした場所では、建物が強く主張しすぎると、周囲の景色を壊してしまうことがあります。
一方で、あまり普通すぎる建物だと、せっかくの場所の魅力が伝わりにくいこともあります。
土に包まれる建築は、その中間にあります。
景観になじむ。
でも、印象には残る。
このバランスが、宿泊施設や観光農園、別荘、自然型施設では大きな価値になると思っています。

農業用途については、少し分けて考えるとわかりやすいです。
栽培や生産を目的とした農業用D型ハウスは、UnderSOILではGreenシェルターとして展開します。
一方、アースシェルを用いた土中建築は、観光農園の受付、休憩棟、カフェ、体験スペース、宿泊棟のように、人が滞在したり接客したりする場所と相性があります。
たとえば、農園の中に普通の建物を置くのではなく、土と緑に包まれた休憩棟やカフェをつくる。
収穫体験のあとに、景色を見ながら休める場所をつくる。
農業と観光をつなぐ建物として考える。
そういう使い方は、UnderSOILの土中建築らしい提案になると思います。
また、ワイナリーや飲食店の地中貯蔵、ワインセラー、農産物保管といった用途では、土中建築よりもGroundfridgeが主役になります。
同じ「土の力を使う」提案でも、人が滞在する建築なのか、食品やワインを保管する地中貯蔵なのかで、選ぶ製品は変わります。
宿泊施設や住宅、観光農園のように、人が過ごす場所をつくるなら、アースシェルを用いた土中建築。
栽培や生産を考えるなら、Greenシェルター。
ワインや農産物の保管を考えるなら、Groundfridge。
目的に合わせて選ぶことで、計画はかなりわかりやすくなります。
UnderSOILの土中建築は、完成品の小屋を買う話ではありません。
アースシェルという仕組みを使い、その土地の地盤、水、景色、用途、建築確認、施工条件に合わせて、土に包まれる建築をつくる話です。
だから、どの土地にも同じ答えはありません。
でも、その土地に合った答えをつくれる可能性があります。
山の中の宿泊棟。
畑のそばの休憩所。
景色に溶け込む戸建て住宅。
里山にある小さなカフェ。
観光農園の体験施設。
「この場所に、普通の建物ではない何かをつくりたい」
そう考えたとき、土中建築は一つの選択肢になります。
日本では、まだ聞き慣れない言葉かもしれません。
でも、これから自然や景観を活かした建物を考えるなら、土中建築という選択肢は、もっと広がっていいと思っています。