【第10回】この形には理由がある
こんにちは。UnderSOIL(アンダーソイル)の野口です。
今回はアースシェルが、土を受け、水を逃がし、景観になじむ理由のお話をします
UnderSOILのFRP草屋根を見ると、まず目に入るのは、丸みのある形だと思います。
地面からふわっと盛り上がったような建物。
壁と屋根の境目がはっきりせず、土と植物に包まれているように見える形。
「かわいいですね」
「絵本みたいですね」
「秘密基地みたいですね」
そんなふうに言われることもあります。
建物を見た瞬間に興味を持ってもらえることは、宿泊施設や観光施設では大きな力になります。
でも、この形は見た目だけで決めているわけではありません。
UnderSOILが考えるFRP草屋根は、アーチ状のFRPフレームでアースシェルをつくり、その外側を防水・排水・土・植物で構成する土中建築です。
つまり、この丸い形には理由があります。

まず大きいのは、土を受ける形です。
土は、見た目よりずっと重いです。
雨を含めば、さらに重くなります。
地域によっては、そこに雪の重さも加わります。
普通の四角い建物の上に土をのせようとすると、屋根に大きな荷重がかかります。
構造、防水、排水、防根、土のずれ、メンテナンスまで、かなり慎重に考えなければいけません。
一方で、アーチ状の形は、土に包まれる建築と相性があります。
もちろん、アーチだから何でも大丈夫、という話ではありません。
用途、規模、積雪、風、地震、基礎、接合部、建築確認申請。
これらは案件ごとにきちんと整理する必要があります。
ただ、土に包まれる建築を考えるとき、四角い箱の上に無理やり土をのせるより、曲面として受ける方が自然です。
山や丘を見ても、角ばった形より、なだらかな形の方が地形として自然に見えます。
UnderSOILのアースシェルは、その感覚を建築に持ち込むための形でもあります。

次に大事なのは、水を逃がす形です。
第9回でも書きましたが、土中建築で一番怖いのは水です。
雨水。土が含む水分。地盤まわりの水。湿気。
これらをどう止め、どう逃がすかが、とても重要になります。
アースシェルのような曲面は、水を下へ流す考え方と相性があります。
平らな部分や角が多い部分には、水がたまりやすくなります。
水がたまり続けると、防水層や接合部に負担がかかります。
もちろん、丸い形にすれば自動的に解決するわけではありません。
勾配、排水層、砕石、透水層、排水管、フレンチドレン、敷地全体の水の逃げ道まで必要です。
でも、最初から「水が流れる形」として計画しやすいことは、土中建築では大きな意味があります。
水は、止めるだけでは足りません。
流して、逃がすところまで考える。
ここが、アースシェルの形を考えるうえで大事なポイントです。
もう一つ、この形には大きな意味があります。
それは、壁と屋根を分けすぎないことです。
一般的な建物では、外壁があり、屋根があり、軒があり、雨どいがあります。
それぞれに役割があり、それぞれの納まりがあります。
それに対して、UnderSOILのFRP草屋根では、壁から屋根までが連続した形になります。
そこに土と植物が重なることで、建物は「箱」ではなく、少し地形に近づいていきます。
ここが、普通の屋上緑化との大きな違いです。
屋根の上だけを緑にするのではなく、建物全体が土と植物に包まれているように見える。
この考え方が、UnderSOILの土中建築らしさです。

施工や申請の面でも、この形には考えるべきことがあります。
曲面の草屋根建築を構造からつくる方法としては、RC造のシェル構造や、大断面集成材・曲線集成材によるアーチ構造も考えられます。
RC造であれば、コンクリートそのもので曲面の構造をつくる。
大断面集成材であれば、アーチ梁そのもので形を支える。
どちらも、それ自体を主要構造として成立させる考え方です。
その分、構造計算、基礎、接合部、土荷重、積雪、地震、防水、断熱、結露対策まで、本格的な検討が必要になります。
一方で、UnderSOILが現時点で進める方法は少し違います。
まずは確認申請上、主要構造を成立させる。
その外側に、FRPのアースシェルを組み合わせる。
つまり、アースシェルは、屋根と外壁をまたぐ曲面形状をつくり、防水、断熱、土被覆、植栽の考え方を成立させるための外側の仕組みとして考えます。
将来的には、国内での認定取得を進め、アースシェルそのものを構造体として扱える方向を目指したい。
ただ、現時点では、建築確認申請の現実性も考えながら、段階的に進める必要があります。
ここを混同しないことが大切です。
見た目は一体でも、設計上は、構造、防水、断熱、土、植栽、確認申請をきちんと分けて整理する。
そのうえで、ひとつの建築として成立させる。
UnderSOILの提案は、そこまで含めた話になります。
そして最後に、景観になじむ形という意味があります。
四角い建物は、自然の中では輪郭がはっきり出ます。
人工物として見えやすい。
もちろん、それが悪いわけではありません。
あえて目立たせる建築もあります。
ただ、UnderSOILが目指しているのは、土や植物と一体になり、景観に溶け込む建築です。
アーチ状の形に土と植物が重なると、建物の輪郭がやわらぎます。
屋根だけが緑なのではなく、建物全体が地形の一部のように見えてきます。
ここが、宿泊施設、観光農園、ワイナリー、自然景観の中にある施設と相性がいい理由です。
強く主張しすぎない。
でも、印象には残る。
これ、かなり大事です。
目立ちすぎないのに、忘れられない。
建築としては、なかなか良い立ち位置だと思います。

つまり、この形は単なるデザインではありません。
土を受けるための形。
水を逃がすための形。
壁と屋根を一体で考えるための形。
景観に溶け込むための形。
施工と申請を現実的に整理していくための形。
いろいろな理由が重なって、アースシェルという形になっています。
もちろん、形だけで建築は成立しません。
構造。防水。排水。断熱。換気。植栽。建築確認。維持管理。
全部必要です。
でも、最初の形が間違っていると、あとから全部が苦しくなります。
土中建築では、形は見た目ではなく、考え方そのものです。
最後にひとことで言うなら、
UnderSOILの丸い形は、かわいくするためだけのものではないっす。
土を受け、水を逃がし、景観に溶け込み、人が安心して過ごせる空間をつくるための形です。
だから、アースシェルには理由があります。
そしてその理由をきちんと説明できることが、UnderSOILの営業でも、設計でも、とても大事になると思っています。