【第9回】土中建築で一番怖いのは水です
こんにちは。UnderSOIL(アンダーソイル)の野口です。
今回はアースシェルで考える、防水・湿気・浸水リスクのお話です。
土中建築やFRP草屋根の話をすると、どうしても見た目に目がいきます。
草に覆われた外観。
地形になじむ曲面。
普通の建物とは少し違う雰囲気。
もちろん、それも大事です。
見た瞬間に「何これ、面白い」と思ってもらえることは、建築として大きな力になります。
でも、土中建築で本当に大事なのは、見た目の前に水です。
雨水、湿気、結露、地盤まわりの水、土が含む水分。
土に包まれる建築では、水を甘く見ると、あとでかなり困ります。
水は、こちらの都合を聞いてくれません。
入れるところがあれば入ります。
たまる場所があればたまります。
そして、気づいた時には「なんか湿っぽい」「におう」「カビっぽい」という話になる。
これ、土中建築では一番避けたいところです。

地下室や土に接する建物というと、コンクリートを想像する方も多いと思います。
コンクリートは強い材料です。
構造材としては非常に頼れる存在です。
ただ、地下や土に接する部分では、ひび割れ、打継ぎ、貫通部、排水不良、結露、換気不足など、いくつもの要素を考える必要があります。
「コンクリートだから絶対に安心」という話ではありません。
地下室で、なんとなく湿気臭い。
カビっぽい。
空気が重い。
そういう印象を持ったことがある方もいると思います。
もちろん、すべてのコンクリート地下室がそうなるわけではありません。
きちんと設計し、防水し、排水し、換気まで考えれば成立します。
ただ、土に接する建築では、水と湿気をどう扱うかが本当に重要になります。
ここで、UnderSOILがFRPを重視する理由があります。
UnderSOILのFRP草屋根は、一般的な屋根にあとから芝をのせる建築ではありません。
アーチ状のFRPフレームによって、壁と屋根が一体になった構造体をつくり、その外側を土と植物で覆う建築です。
UnderSOILでは、この土に包まれるFRP構造体をアースシェルと呼んでいます。
つまり、土や水に接する部分そのものを、FRPで考えるということです。
ここが大きな特徴です。
木製下地にルーフィングやフィルムで防水する方法もあります。
ただ、その場合は、基本的には「水に弱い下地を、防水材で守る」という考え方になります。
防水材は大事です。
でも、防水材も永久に同じ状態ではありません。
材料の種類、仕様、施工精度、温度変化、紫外線、建物の動き、接着状態によって、硬化、収縮、破断、接着低下などのリスクを考える必要があります。
特に、土に覆われる建築では、防水層をあとから簡単に確認できないことがあります。
ここが怖いところです。
見えない場所で、長く水に耐えなければいけない。
これはかなり厳しい条件です。
だからUnderSOILでは、アースシェルを土中建築の基本に置くことに、大きな意味があると考えています。
FRPは錆びにくく、腐りにくい。
水に接する建築部材として合理性があります。
防水材だけで構造体を守るのではなく、まず土に接する部分を水に強い素材でつくる。
その上で、防水層、保護層、排水、土、植栽を組み合わせる。
この考え方が、UnderSOILの土中建築にはとても重要です。

ただし、ここで誤解してはいけないのは、FRPだから絶対に漏れない、という話ではないことです。
どんな材料でも、水が入りやすい場所はあります。
接合部。端部。貫通部。開口部まわり。排水口まわり。
水は本当に上手に弱点を探します。
こちらが「そこは見逃してくれ」と思っても、だいたい見逃してくれません。
だから、FRPを使う場合でも、接合部の処理、防水仕様、排水計画はとても重要です。
アースシェルをつくる。
接合部を丁寧に処理する。
防水層で守る。
保護層で傷を防ぐ。
余分な水を排水する。
土と植物で景観になじませる。
この順番を、最初からセットで考える必要があります。
土中建築では、防水と排水はセットです。
水を止めるだけでは足りません。
水をためないことも大事です。
どれだけ防水をしても、建物のまわりに水がたまり続ければ、防水層や接合部には負担がかかります。
だから、余分な水を逃がす道をつくる。
砕石。透水層。排水管。フレンチドレン。勾配計画。
こうした見えない部分が、かなり大事になります。
見えないところほど大事。
建築も人間も、だいたいそうです。

UnderSOILが考える土中建築は、地面の中にただ部屋をつくる話ではありません。
土と水に接する部分をどうつくるか。
水をどこで止めるか。
どこへ逃がすか。
湿気をどうためないか。
室内の空気をどう動かすか。
そこまで含めて考える建築です。
FRP草屋根の見た目は、草や芝に包まれたやわらかい建物です。
でも、その本質はかなり実務的です。
アーチ状のFRPフレームで、壁と屋根が一体になったアースシェルをつくる。
その外側に、防水、保護、排水、土、植物を重ねる。
水を止めるだけでなく、逃がすところまで考える。
ここに、UnderSOILがFRPを重視する理由があります。
最後にひとことで言うなら、
土中建築で一番怖いのは、水です。
だからこそ、UnderSOILのFRP草屋根では、見た目の草や芝より先に、FRP、防水、排水を考えます。
土に包まれる建築は、ロマンだけでは成立しません。
水と向き合って、初めて成立する建築です。